2025年春分の星の配置では、チャートルーラーである金星がディセンダントを挟み太陽と共に並び、7ハウスに顔を出していました。ディセンダントは他者との関わりを象徴する場所です。ここに並んだ太陽と金星は、社会との関係性を見るときの大切な焦点であることがわかります。
金星といえば、占星術では「愛」「美」「調和」を示す星として知られています。人を惹きつけ、和ませる雰囲気。それは確かに金星を表す代表的な質です。
けれども、その原型をたどれば、金星はメソポタミアの女神イシュタル(イナンナ)と重なります。イシュタルは愛と豊穣の女神であると同時に、戦いの女神でもありました。つまり金星は、調和と同時に、闘いの場に降り立ち戦う力をも象徴しているのです。
現代の社会において、女性が表舞台に立ち、リーダーシップを発揮しようとする時、必ず直面するのが「火星的な力」の課題です。火星は行動力、突破力、戦いの星。社会で何かを成し遂げようとすれば、この火星を使わざるを得ません。けれど「女性は火星を使うのが苦手」と言われるように、人前に出たり、社会での競争にそのまま飛び込むことは難しいことも多いのです。
そこで鍵となるのが、金星と火星の結びつきです。金星がもたらす魅力や和やかな雰囲気を、火星の推進力に添えるとき、それは「人を惹きつけながら前へ進む力」へと変わっていきます。勝つために争うのではなく、調和のために動く――その姿勢こそが、金星が火星に与える真の意味なのかもしれません。
イシュタルの物語は、その原型を雄弁に語っています。彼女は愛と戦を同時に生きた女神でした。
現代の女性も、場面は違えど、この両方の精神を持って時代の舞台に立っています。
人を包み込み、人とまあるく繋がりながら、
そのあたたかさをたずさえて、女性は前に進んでいくことができるのです。


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